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フリーマーケットとヴィンテージショップを巡る : トンミョ(東廟) で、古き良き時間を見つける
新しいカフェやブランドショップが次々と誕生し、トレンドも目まぐるしく変わるソウル。街はいつも、前へ進むエネルギーに満ちています。
けれどもトンミョ(東廟) では、時間が少しゆっくりと流れているようです。ここには画一的で洗練されたショッピング街も、つくられたヴィンテージの雰囲気もありません。何十年も前の服、フィルムカメラ、LPレコード、家具や生活雑貨が、今も街の片隅で静かに次の持ち主を待っています。
ヴィンテージ文化が若い世代の間で再び注目を集めるなか、積み重なった古い品々の中から自分らしいスタイルや物語を見つけようと、東廟を訪れる人が増えています。
東廟の歴史は 朝鮮王朝時代 にまでさかのぼります。この街の名は、トングァン・ワンミョ(東関王廟) に由来します。文禄・慶長の役の後、明の要請を受けて朝鮮は1601年、関羽を祀る廟を建立しました。その後、東廟周辺はソウルを代表する中古品取引の中心地へと発展し、ファハクドン(黄鶴洞) フリーマーケットの歴史的な伝統を受け継いできました。
1. フリーマーケットで、自分だけの宝物探し
トンミョ駅を出ると、目の前の景色が一変します。整然と並ぶショーウインドーも、丁寧に整えられた街並みもなく、古い石塀に沿ってフリーマーケットがどこまでも続いています。使い込まれた家電、古着、古い時計、食器、工具、おもちゃなど、ありとあらゆる品々が、整然と、あるいは無造作に露店に並び、次の持ち主を待っています。
トンミョ(東廟) の魅力は特定の商品にあるのではなく、ここでは何に出会えるかわからないところにあります。古いラジオの前にしゃがみ込んでじっくり眺める人、雑多な品々の中から気になる小物を探す人、古い塀に沿ってゆっくり歩きながら見て回ることを楽しむ人もいます。一つひとつの露店は、異なる時代の痕跡をとどめた小さな宝箱のように、それぞれの暮らしの記憶を抱えています。
ソウル市チョンノ(鐘路)区スンインドン(崇仁洞)102-8 (서울시 종로구 숭인동 102-8)
年中無休 10:00~17:00、18:00/店舗により営業時間が異なる場合があります。
地下鉄1号線/6号線「トンミョアプ」駅3番出口, 61m
2. おもちゃ通りで童心を取り戻す
フリーマーケットを抜けて歩いていくと、脇にある チャンシンドン( 昌信洞)文具・玩具通りに入ります。40年以上の歴史を持つこの通りは、かつて韓国最大の文具・玩具卸売市場でした。今も人情味あふれる雰囲気を残しながら、子どもの頃の思い出を探す若者たちを引き寄せています。
最近、この通りで特に人気を集めているのが、ストレス解消にもなるマランイ(スクイーズ)です。多くの店の前は人でにぎわい、手に取ったおもちゃを何度も触ってみたり、色や手触りを真剣に比べたりする姿が見られます。よく見ると、その多くは子どもではなく、20~30代の若者たちです。
かつて子どもだけのものだったおもちゃが、今では大人の楽しみにもなっています。大人になっても消えない楽しみは、形を変えて、また私たちのもとへ戻ってくるのかもしれません。
ソウル市チョンノ(鐘路)区チョンロ52ギル36 (서울 종로구 창신동 390-29)
月~金 08:00~19:00/週末は不定期
地下鉄1号線/6号線「トンミョアプ」駅6番出口, 164m
3. ヴィンテージショップで出会う、もう一つのヴィンテージ
フリーマーケットの醍醐味が思いがけない発見にあるなら、東廟周辺のヴィンテージショップは、きれいに編集されたコレクション空間のような場所です。
トンミョ駅からほど近いCEMT(セムト)は、若者から支持を集めるセレクトヴィンテージショップです。フリーマーケットに積み重ねられた服とは異なり、ここに並ぶ商品はすべて店主自らが選び、組み合わせたもの。さまざまな年代の衣類、帽子、アクセサリーが整然と並び、丁寧につくられたショールームを思わせます。
特に印象的なのは2階です。木の柱の間には多彩なヴィンテージ小物やオブジェが吊るされ、衣類、家具、照明が組み合わさって、奥行きのある空間をつくり出しています。買い物の予定がなくても、ゆっくり一周するだけで展覧会を鑑賞しているような気分になります。
一方、路地の奥に佇む「PURPLE GARAGE」は、まったく異なる雰囲気をまとっています。市場特有のにぎわいも、絶え間ない人の流れもありません。1階と地下には、日本やアメリカから仕入れた古着や小物が並び、店内は思わず足取りをゆるめたくなるほど静かです。
特に心に残ったのは、地下の片隅に置かれた小さな冷蔵庫です。中にはミネラルウォーターがあり、誰でも自由に取り出して飲むことができます。こうしたさりげない心配りが、商業施設特有の距離感を和らげ、地域の小さなお店ならではの温かさを感じさせます。流行のアイテムを探しにわざわざ訪れるというより、いつでもまた立ち寄りたくなる、そんな街のお店です。
ソウル市チョンノ(鐘路)区チボンロ12 ピルヒョンビル1階105号 (서울시 종로구 창신동 394-1)
年中無休 11:00~19:00
地下鉄1号線/6号線「トンミョアプ」駅5番出口, 68m
ソウル市チョンノ(鐘路)区チョンノ53ギル22-4 (서울 종로구 종로53길 22-4)
月~金 12:00~19:00、土~日 11:00~19:00
地下鉄1号線/6号線「トンミョアプ」駅8番出口, 267m
4. 宝物の洞窟に迷い込んだような「Retroholic(レトロホリック)」
目的を持って探さなければ、地下にひっそりとあるこの小さな店は通り過ぎてしまうかもしれません。細い階段をゆっくり下りていくと、ようやくRetroholicが姿を現します。店は大きくありませんが、フィルムカメラ、ヴィンテージデジタルカメラ(CCD)、レトロなおもちゃ、古い電子機器など、時を重ねた小物がぎっしりと詰まっていて、まるでコレクターの秘密の倉庫に迷い込んだような気分になります。
ここには広く明るい展示空間も、洗練されたディスプレイもありません。午後の陽射しが扉の隙間から斜めに差し込み、並んだ古いカメラやレンズの間に落ちて、空間全体に穏やかな雰囲気を添えています。カメラを一台手に取ると、これまでどんな風景を写し、誰の人生に寄り添ってきたのだろうと、つい想像がふくらみます。
5. 生活雑貨店でのぞく、コレクターの世界
東廟が都市の時間を集める場所だとしたら、「マンムル・サンダン (万物商団)」は一人の人の世界を集めた場所といえるでしょう。
店に入ると、店主はうつむきながら古い器を丁寧に磨いていました。急いで客を迎えることも、商品を紹介することもなく、長年連れ添った友人をいたわるかのように、手にした器に静かに向き合っている姿でした。
話をうかがって初めて、店主が20年以上にわたり中国骨董を収集してきたこと、かつて中国中央美術学院で大学院課程を修めたことを知りました。この店もすでに30年続いています。店主にとっては、世界各地を巡って心惹かれる品を見つけ、韓国へ持ち帰ることが何よりの楽しみなのだそうです。
こうして韓国、中国、日本、さらにはヨーロッパ各地から集まった器、装飾品、家具、生活雑貨が、この小さな空間で出会い、店主だけのコレクションの世界を形づくっています。
さらに奥へ進むと、地下にはもう一つ小さな空間が隠れています。決められた鑑賞ルートも、意図的に設計された展示方法もなく、隅々に異なる時代からやって来た品々が置かれています。店を出るとき、ここで本当に展示されているのは骨董品ではなく、一人の人が数十年にわたって積み重ねてきた情熱なのかもしれない、と思いました。
ソウル市チョンノ(鐘路)区チョンノ58ギル41 (서울시 종로구 종로 58길 41)
年中無休 11:00~18:00
地下鉄1号線/6号線「トンミョアプ」駅3番出口, 238m
6. LPレコードから聴こえる、もう一つの時代
東廟での最後の目的地には、「イェウムレコード」を選んでみてはいかがでしょうか。隙間なく並ぶLPレコード、時代ごとに異なるアルバムジャケット、木製のレコード棚とヴィンテージオーディオが、まるで別の時代へ足を踏み入れたような感覚をもたらします。
ここには世界各地から集められたLPレコードがそろい、ジャズやロックからクラシックまで、幅広いジャンルの音楽が並んでいます。LPレコードの愛好家でなくても、この空間が放つ魅力にきっと惹かれるはずです。
デジタル音源が日常に溶け込んだ今も、時間をかけてレコードを一枚ずつめくるように探す人がいます。レコードをそっと取り出し、ジャケットをじっくり眺めてから、また元の場所へ丁寧に戻していきます。
ここでは、レコードを選ぶ時間そのものが楽しみです。家へ持ち帰るのは、もしかすると一枚のLPレコードだけではなく、自分だけの大切な思い出なのかもしれません。
ソウル市チョンノ(鐘路)区チョンノ58ギル41 201号 (서울시 종로구 종로 58길 41, 201호)
月~水 10:15~18:30、木~土 10:15~19:00
地下鉄1号線/6号線「トンミョアプ」駅3番出口, 247m
東廟はソウルで最もトレンディーな街ではないかもしれません。けれども、思わず歩く速度をゆるめたくなる街であることは間違いありません。服を探しに来る人、古いカメラを買う人、午後いっぱい、通りや小さな店の間をただゆっくり歩く人もいます。
トングァン・ワンミョ(東関王廟) から始まり、東廟フリーマーケットを歩き、チャンシンドン(昌信洞) 文具・玩具通り、ヴィンテージショップ、コレクターの空間、LPレコードショップまで巡っていると、いつの間にか午後はあっという間に過ぎています。
東廟を後にするとき、私たちが本当に持ち帰るのは、特定の品物ではなく、時間と人、都市、そしてソウルのもう一つの表情にまつわる記憶なのかもしれません。